いかなる強制送還にも正当性はない
1.はじめに
ひじょうに腹立たしいニュースがとびこんできました。
読んでみると、法務省の幹部が子飼いの新聞記者にリークして書かせた記事だということがわかりますが、ここに述べられている法務省の方針、そして記者の書き方、いずれもひどいものです。
不法滞在者の強制送還を効率化するため、法務省は、一度に多数を帰国させられる専用チャーター機の活用方針を固めた。一般客も乗り合わせる航空機で対象者を1人ずつ送り出す現在の方法より、費用と安全の両面で利点があるとしている。同省は来年度予算の概算要求で関連費用約3000万円を計上。予算が通れば、年間150人程度にとどまっていた送還拒否者の帰国人数を350人程度に増やせるという。
「不法滞在者」という言葉の選び方の問題については、あとで述べます。
その「不法滞在者」の強制送還が「効率」という観点からのみ語られ、この強制送還という暴力によって壊されるひとりひとりの生活への想像を徹底して欠いた、この記事の文章には、心の底からぞっとします。
人間を、これまで生活してきた土地と人間関係から強制的に引きはがして監禁し、暴力をもちいて国外追放にする。強制送還とはこうした行為にほかなりません。たとえどのような方法を選んだとしても。
このようなものでしかありえない強制送還について、ある方法がほかの方法よりも「費用と安全の両面で利点がある」などというおしゃべりを記者にむかって語る法務省幹部。また、このおしゃべりを批判的な論評・情報もなくたれ流す伊藤一郎さんという記者。おそろしいと言うよりほかありません。
以下、強制送還や「不法滞在者」について、この法務省入管の広報としか評しようのない『毎日』の記事が書き落としていることを述べたいとおもいます。
2.強制送還とは
『毎日』の記事も書いているように、強制送還には航空券の代金を強制送還される人が自己負担する「自費出国」と、その代金を日本政府が負担する「国費送還」とがあります。
「国費送還」がなされるのは、ひとつには、送還される人が帰国のための旅費を用意できない場合です。この場合、航空券代は日本政府が出すものの、送還される人は、ろくに医療も受けられない劣悪な収容施設に半年間ぐらい監禁され、つまりは虐待されたうえで、国籍国に送還されることになります。
「国費送還」は、もうひとつには、これも『毎日』の記事にあるように、帰国を拒否するひとにたいして適用されます。これは「国費無理やり送還」ともよばれます。
この「国費無理やり送還」は、拘束具や薬物投与によって身体を拘束し、文字どおり無理やり飛行機にのせて国籍国に放り出すという措置です。麻酔で意識を失わされ飛行機にのせられた例、毛布でグルグルにすまきにされて送還された例などが、以下のサイトで紹介されています。
●入管収容施設問題を考える - 強制送還・・・「薬物投与送還」と「簀巻き送還」
2010年3月には、国費無理やり送還において、ガーナ人スラジュさんが死亡するという事件もおきています。
●スラジュさん事件 | APFS - ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY
この入管によるスラジュさん殺害事件は各種メディアでも報道され、支援団体、また非正規滞在外国人当事者によるはげしい批判と運動をひきおこしました。以後、入管にとって国費無理やり送還のハードルはかなり高くなったようです。
こうしたムチャクチャな送還は、なにより送還される人にたいするいちじるしく不正な暴力と言うべきですが、飛行機の他の乗客や乗務員の安全をもそこなうものです。航空会社としても、入管の国費無理やり送還に協力するのはむずかしくなるでしょう。
入管は、航空会社の協力をとりつけるためにも、これまでも、送還の「効率性」や「安全」を――まさに『毎日』のぞっとするような記事にでてくる言葉のとおり――追求してきたわけです。
送還される人が暴れるかもしれないから、すまきにしちまえ! すまきにしても大声を出されたらかなわんから、猿ぐつわをかませよう! それより、薬物で気をうしなわせてしまえば、効率的で簡単じゃあないか!
入管が追求してきた「効率性」と「安全」とは、こういうものです。その延長線上に、「チャーター機で一気に強制送還」というこのたび報道された法務省の方針がある。そう考えるべきでしょう。
3.収容をとおした帰国拒否者に対する拷問
入管は全国(茨城県、大阪府、長崎県)に3つの収容所*1をもっています。このほかに、東京入国管理局、名古屋入国管理局など地方局、あるいはその支局に、「収容場」と呼ばれる収容施設をもうけています。
入管は、オーバーステイ(超過滞在)などの退去強制事由にあたる疑いのある外国人に「収容令書」というものを発付し、収容施設に監禁します。これは、警察が逮捕令状にもとづいて刑事事件の容疑者を逮捕するのと似ています。しかし、警察による逮捕の場合、一応は裁判所が発行する逮捕令状を必要とするのにたいし、入管による摘発・収容は、裁判所等の第三者機関のチェックなしにおこなわれます。というのも、「収容令書」を発付するのも、これにもとづいて摘発・収容するのも、おなじ入管という組織であるからです。
ともかく、この「収容令書」にもとづいて収容された外国人は、まずは最大60日間、身柄を拘束され、この間に審査を受けることになります*2。審査の結果、在留特別許可がみとめられれば、なんらかの在留資格があたえられ、収容施設を出ることができます。しかし、これがみとめられずに退去強制令書が発付されると、収容の期限は無期限になります*3。「無期限」というのは、原則としては、帰国しないかぎり、収容施設から出ることはできないということです。
こうして退去強制令書が発付されたひとのほとんどは、自費出国により帰国します。航空機代を用意できないひとは、先に述べたように、しばらく収容施設にとめおかれたうえで、国費送還されます。
しかし、入管に「帰れ」と言われても、当然ながらそう簡単に「帰国」できるひとばかりではありません。人間の生活というものは、そう簡単なものではありません。あとで述べるように、さまざまに帰国できない事情をかかえ、送還を拒否するひとも出てきます。
送還拒否者にたいして、入管は身体的・精神的な圧迫をくわえること、つまりは拷問によって、送還に「同意」するようせまります。「拷問」という言葉をわたしが使うのは、まったく誇張ではありません。
長期にわたる監禁、しかも収容期限がさだまってないので、本人からすると「いつ出られるかわからない」、また「出られるかどうかすらわからない」わけですから、その精神的なストレスは想像を絶するものです。被収容者のなかには、刑務所での服役経験のあるかたもいますが、みなさん口をそろえて言うのは、この期限がきまっていないことのゆえに「入管は刑務所よりつらい」ということです。
このような状況で監禁されると、例外なく、遅くとも4,5ヶ月で拘禁症状を発症します。高血圧、頭痛、極度の不眠、めまい、生理不順など。持病を悪化させるひとも多いですし、収容施設内で運動時間などにケガをするひともいます。東日本ですと、ほとんどの送還拒否者は、仮放免許可によって出所するまでに9ヶ月10ヶ月以上かかり、2年あるいは3年以上収容されている人もいます。心身が健康でいられるひとは、まずいません。
しかし、入管は病人・ケガ人に対して、医療ネグレクトをおこないます。医療ネグレクトの事例は、たとえば仮放免者の会ブログの以下の記事などにくわしく紹介されています。
●心停止した収容者を放置しつづける東日本入管センター
●重病のAさんに仮放免許可/2Bブロックの要求書
収容施設内には診療室がありますが、そこの医者の診療は、「診療」とは名ばかりのもので、患者の顔すら見ず、問診もほとんどなし、症状や訴えにかかわらずどの患者にもおなじ鎮痛剤・精神安定剤・睡眠薬をだしておしまい、というような実態です。
施設内の診療では対処できない病人やケガ人にたいしては、外部の医療機関での診療を受けさせることになっていますが、東日本入国管理センターでは、現状、申請書を出しても少なくとも1ヶ月は待たされる、あるいはどんなに本人がうったえても拒否されるという状況です。
こうした入管の医療ネグレクトは、意図的なものとみるべきです。あきらかに入管は、収容施設の処遇をできるかぎり「改善しない」「劣悪な状態のまま維持する」という方針をもって収容施設を運営しており、その方針を被収容者の健康よりも優先させています。去年わたしが東日本入国管理センターで面会していたあるひとは、施設内で足をケガして、自力で歩くのが困難な状況でしたが、松葉杖を貸すようにと職員に依頼したところ、「保安上の問題がある」との理由で拒否されました。
東日本入国管理センターでは、最近も、足をねんざした被収容者が車イスの貸与を拒否されたということが、被収容者が外部の協力者を通じて更新しているブログで報告されています。
こうした実態からして、入管の収容施設とは、被収容者の身体・精神に虐待をくわえ、国外追放への「同意」をせまることを目的にした拷問施設と言ってまちがいありません。
わたしの言っていることが「極論」だと思われるかたもいるでしょうから、そういうかたのためにもうひとつ事例をあげましょう。東日本入国管理センターでは、収容所の窓にシートを貼って、外の景色がまったくみえないよう細工してあります。その日の空模様も木々の様子も見ることができないということが何ヶ月、ひとによっては数年もつづくわけです。被収容者たちは、再三このシートをはがすよう要求してきましたが、センター側は「保安上の支障がある」との理由でこれを拒否しつづけております。入管はなんのためにこんなことをするのでしょうか? 嫌がらせのほかになにか理由が考えられるでしょうか?
入管収容施設は、個々の職員がみな悪魔のようだということではもちろんありませんが、帰国拒否者にたいし組織的に虐待をくわえることを目的とした事実上の拷問施設であると言えます。こうした施設の性格上、被収容者にたいして「外国人をイジメるのが楽しい」「バカ」などと暴言をはくほどの職員の深刻なモラル低下が生じるのも、ふしぎではありません。
●仮放免者の会(PRAJ): 「外国人をイジメるのが楽しい」(入管職員CH115の発言)
4.抵抗には切実な理由がある
入管がおこなってきた強制送還というのが実際にどういうものなのか、わたしの知りうるかぎりで、できるだけ具体的に説明してきたつもりです。
拘束具や薬物をつかう方法。拷問施設に長期間監禁して「帰国」に「同意」させる方法。どちらの方法がベターでしょうか? それぞれの方法の「費用と安全」の面でのメリット・デメリットはなんでしょうか? どちらの方法がより人道的でしょうか?
こうした比較や議論そのものがバカげています。絞殺と薬殺と銃殺のうち、「費用と安全」の面でどの殺し方がベストでしょうか? いちばん人道的な殺し方はどれでしょうか? バカバカしい。
強制送還の「方法」について比較検討し、あれこれおしゃべりすること自体が、人殺しの方法について検討すること同様、恥ずべきことです。問題とすべきなのは、強制送還そのものについてです。
どのような「方法」をえらぼうと、またどのような「方法」を考えだそうと、強制送還そのものがきわめて悪質な暴力であることにはかわりありません。だからこそ、飛行機にむりやり乗せられるときに激しく抵抗するひとが出てくるのだし、監禁され拷問をうけても、送還を拒否して仮放免許可で出所しているひとが現在2500人も(先の『毎日』の記事にあるとおり)いるのです。
強制送還(退去強制令書の執行)をしようとする入管の側からすると、2010年3月のスラジュさん殺害事件以降、航空券を買って、一般の航空便でひとりずつ送還する方法はそのハードルが高くなった。他方で、収容施設に長期間監禁して圧迫をくわえても、拷問にたえて帰国を拒否しつづけるひとがおり、仮放免で出所しているひとは2500人をこえるにいたった。航空機をチャーターすれば、「効率的」な送還が可能だし、この方法での送還がはじまれば、帰国拒否者に自費で出国するよう今まで以上に効果的におどしをかけること(「むりやり飛行機にひっぱっていかれるのがイヤだったら、自費で航空券を買って帰りなさい」というふうに)も可能になる。そういう考えなのだろうと思います。
ここにあるのは、どうやって送還拒否者の抵抗をくじき、「効率的に」強制送還をおこなうかという計算です。いわば、いかに入管にとって「効率的に」暴力を遂行するかという話であって、送還されるひとがこうむるダメージがより小さくなるわけではありません。パートナーや子どもや親、長年きずいてきた人間関係からひきはがされること。あるいは、国籍国に送還されることで殺害や投獄の危険にさらされるひともいます*4。
こういった人たちには、強制送還に抵抗する切実な理由があるのであって、いかなる方法で送還しようとしたとしても、その抵抗がやむことはないでしょう。収容施設での苛酷な帰国強要によっても入管が送還できないようなひとたちは現にいるわけです。強制送還のどんな方法をあみだそうとも、かれら・かのじょらの抵抗する力を弱めることは、できないでしょう。これは予言です*5。
強制送還がひきおこす抵抗を、強制送還によっておさえつけることはできません。強制送還のひきおこす抵抗をなくすには、強制送還をやめる以外に方法はありません。
「造反有理」とはよく言ったものです。くりかえしますが、かれら・かのじょらが抵抗するのは、抵抗する理由があり、その抵抗する理由がきわめて切実なものだからです。したがって、強制送還に「効率的な」方法などありません。強制送還をやめることだけが、事態を収拾しうる唯一の手段です。いま手づまりの八方ふさがりにおちいってるのは、ある意味、むしろ入管のほうなのではないでしょうか?
ならば、入管はもう一刻もはやく強制送還をあきらめたらよいのです。今後も強制送還のハードルがますます高くなることはあっても、低くなることはないでしょう。また、そのハードルをもっと高めるために、強制送還に反対する側がとりうる手段には、さまざまなものがあるはずです。
5.「不法滞在者」とはなにか?
在留資格のあるなしにかかわらず、外国人にたいする差別発言の定番は「日本がきらいなら(日本に文句があるなら)あなたの国に帰ればいいじゃないか」というものです。入管の職員もおなじことを言います。「あなたのダンナさんは在留資格はあるけど中国人なんだし、いっしょに中国に帰ればいいじゃない」など*6。
こういうふうな口をきくひとに言いたいのは、「軽々しく『帰ればいい』などと言うな!」ということです。「あなたの国に帰ればいい」などとと外国人にむかって言うひとは、日本が「自分の国」であると疑いもせずに信じこんでおり、だから自分が外国人を「自分の国」である日本に「いさせてあげる」か「追い出す」かをきめる権限をもっている、そう考えているのでしょう。思い上がりもはなはだしい。
差別主義的な偏見をすこしでもぬぐってみるなら、日本人も外国人も、あるいは在留資格のない非正規滞在の外国人も、この社会の住民であることにかわりありません。ある住民がほかの住民に「出て行け」などと命令する特権的な資格などないし、反対に、ある住民が拉致監禁されて国外追放されてよい正当な理由などありません*7。
そのようなことに正当な理由などないからこそ、行政は、ある種の住民を追い出すことがあたかも正当であるかのようなプロパガンダを必要とするのです。日本では、まるで外国籍住民、とりわけ在留資格のない外国籍住民が犯罪者もしくは犯罪者予備軍であるかのような行政によるプロパガンダが、とりわけ2000年代前半あたりから強化されてきました。そうした過程で、(時期ははっきりと特定できてないのですが)さきの『毎日』の記事にも使われている「不法滞在者」ということばが発明され、積極的に使われるようになってきました。
2003年には、法務省入国管理局・東京入国管理局・東京都・警視庁の4者によって、「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」なる差別的・排外主義的な宣言が出されるにいたります。
不法滞在者は、その多くが不法就労活動に従事しているほか、安易に金を得るため犯罪に手を染める者も少なくなく、さらには、暴力団等と結託し、あるいは犯罪グループを形成するなとして、凶悪犯罪に関与する者も増加しているなど、一部不法滞在者の存在が、多発する外国人組織犯罪の温床となっているとの指摘があり、我が国の治安対策上、これら不法滞在者問題の解決が喫緊の課題となっている。
この法務省入管らによる「共同宣言」は、このように非正規滞在の外国人への差別的偏見をあおって、「不法滞在外国人」にたいする摘発の強化をうたっております。
80年代後半ないし90年代初頭から非正規に滞在する外国人が口をそれえて証言するのは、かつては警察もオーバーステイについて今よりずっと無頓着だったということです。わたしの知っている非正規滞在のフィリピン人から、つぎのような話を聞いたことがあります。
おれも昔は交番でおまわりさんに道を聞いたんだよ。「ビザはあるのか?」と聞かれて「オーバーステイです」って言っても、「そうか、犯罪やってないんだろ?」で終わりだった。でも、いつからかきびしくなって、友だちのフィリピン人がみんなつかまって帰らされちゃった。それからは、おまわりさんには気をつけるようになった。
現在では、警察は職務質問によって組織的に「不法滞在外国人」の摘発をおこなっていますし、入管は入管で摘発を強化しています。
以前は、非正規滞在の外国人は、いわば安価で「使い捨て」のしやすい「労働力」として、みのがされていたわけです。また、バブル期に来日したひとにかぎらず、非正規滞在の外国人は、たんにかれら・かのじょらの都合だけで日本に来たわけではありません。日本のこの地で長く生活してこられたということは、日本社会がかれら・かのじょらの滞在を要請してきたということ、そこには日本社会にとっての必要性があったということを意味します。フィリピン・中国・イラン・スリランカ・バングラディシュ・パキスタンといった、かれら・かのじょらの出身地がかれら・かのじょらを送り出したというだけでなく、日本の側がかれら・かのじょらの存在を要請し、言うならば引っぱり込んだということでもあるのです。
そうやって、みずから要請し、引っぱり込んだひとたちにたいして――おそらく2000年ごろに政府の方針転換があったのでしょう――こんどは「不法滞在外国人」のレッテルをはって、追い出しにかかっている。非正規滞在外国人にたいして行政が仕掛けてきたネガティブ・キャンペーンは、ほんとうにひどいものです。
入管と警察がいかにひどいプロパガンダをやっているかということについては、このブログでも以前ふれたことがあります。
また、ナショナル・メディアの一部も、外国人への差別的偏見をあおり、強制送還を正当化しようとする法務省や入管のプロパガンダに協力し加担してきました。以下は、おそらくは法務省の官僚が『朝日新聞』の記者にリークして書かせたもので、難民認定申請者を犯罪の温床と印象づけようとする、きわめて悪質な差別記事です。
●朝日新聞デジタル:難民認定申請中の犯罪相次ぐ 日本滞在できる制度悪用か - 社会
しかし、法務省や入管は、このように差別的なプロパガンダをおこない、「治安悪化をもたらす不法滞在者」という虚像をつくりだそうとすることでしか、みずからがおこなう強制送還を正当化できないということでもあります。それほどに、法務省と入管がやろうとしていることには正当性がないし、またそのことを法務省と入管自身も知っている、ということです。自分らのやっていることにうしろめたさを感じざるをえないのは、法務省や入管のほうです。
入管が強制送還しようとしているのは、どういったひとたちなのか? わたしたちがいだいている「不法滞在者」についてのイメージには、行政による差別的プロパガンダが反映していないだろうか?
こういったことについて、よく知り、またよく考え、おおっぴらに語ること。そうして行政が悪意をもってつくりあげてきた非正規滞在外国人像を一枚一枚はがしていくこと。入管にとっての強制送還のハードルをさらに高くしていく手だてはあるはずです。入管による国費無理やり送還をかならず断念させましょう。
6.さいごに
さいごに、2011年の3月11日の東日本大震災にあたり、入管や警察の言うところの「不法滞在者」たちがとった行動の一部を紹介しておきます。
●P-navi info : 入管収容者からの義援金について感じたこと少し
一方、震災時に入管がとった行動は以下のようなものです。
*1:東日本入国管理センター、西日本入国管理センター、大村入国管理センター。
*2:審査は場合によって在宅でおこなわれることもあります。
*3:最大60日間という期限つきの「収容令書にもとづく収容」と区別して、この期限のない収容を「退去強制令書にもとづく収容」と呼びます。
*4:難民条約は、以下のように「難民」を定義しています。
「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができない者又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」
日本は諸外国にくらべて申請者にたいする難民認定率、また難民認定数がいちじるしく低いことがよく知られていますが、上記の「難民」のカテゴリーにおさまらないひとのなかにも、送還によって身の安全をおびやかされるおそれをいだいているひとが多数います。その本人が「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがある」とはかならずしも言えなくても、紛争が常態化している地域に帰ることは危険でしょう。また、ブローカーにだまされるなどして多額の借金をして渡航してきたひともまた、帰国することで危険にさらされる場合があります。
*5:この表現は、敗北感と無力感にうちのめされた2001年の柄谷行人のことば、「これは予言ではない」の批判的・否定的な借用です。
*6:これは私の友人のオーバーステイのひとが入国警備官から実際に受けた発言です。
*7:「正当な理由がある」と言えるのは、軍事力を背景にいすわる侵略者・植民者に「出て行け」と要求するといった場合のみです。