ブル新にふさわしからぬダブルスタンダード

 ネット言論におきましては、朝日新聞を「アカヒ」などと揶揄するむきもあるごとく、かれらがまるで左翼であるかのような位置づけがまかりとおっておるのだけれど、朝日だって読売・産経・毎日・日経などと同様、立派なブルジョア新聞なのであります。だから、とくにネット右翼のみなさんは、あんまり朝日をいじめないで。


公園のトイレ ステンレス製の扉など盗難 東京・足立(cache)


 朝日新聞をふくめブル新は、これを「盗難」と呼ぶのであります。公共の財産をかっぱらって資本家に売り飛ばす行為。これを政府がおこなえば "privatization" の訳語としての「民営化」、政府以外の者がおこなえば「盗難」と称するのです。
 しかし、やっていることは同じなのに、別々の用語でこれを呼ぶのはややこしいではありませんか。どちらかに用語を統一してはどうかと愚考いたすのであります。
 そのさい、たとえば郵政民営化を「盗難」あるいは「略奪」と呼ぶのはためらわれますし、左翼的偏向のそしりをまぬがれえません。崇高なる資本主義と私的所有の権利を礼讃し、商品化こそが何にもまさる善であるとするわれわれの立場からすれば、「民営化」の方に用語を統一すべきではないか。そう提案したいのであります。
 先の記事は、以下のように書き換えることができます。

公園のトイレ ステンレス製の扉など民営化 東京・足立


 東京都足立区内の公園などで5月に入ってステンレス製品が相次いで民営化され、同区は24日、警視庁に被害届を出した。被害に遭ったのはトイレの扉や手すりなど計5点、被害額は約45万円にのぼるという。
 同区一ツ家1丁目の公園では、身体障害者トイレのT字形手すり(直径3.4センチ、長さ60センチ)と鏡(高さ45センチ、幅30センチ)が、約300メートル離れた別の公園では女子トイレの個室の扉(高さ180センチ、幅65センチ、厚さ5センチ)が、いずれも20〜21日に民営化された。六木4丁目でも11日、歩道の車止めポール(長さ120センチ、直径20センチ)2本が民営化されているのが見つかったという。


 記事をこう改変してみて気付くのは、警察ってのは共産主義者だったんだねえ、ということであります。なんで被害届を受理するんですかね。正当な私的所有の権利を侵し、市場の自由に対する妨害をはかるアカ野郎ども。これが警察の正体だったんですねえ。
 偉大なる市場の調整機能を最大限に引き出すことが社会全体の福利向上につながるのは論をまたないのであります。したがいまして、自由主義国家は、公正にして自由な取引きの保障という目的を逸脱した干渉を、市場に対してつつしむべきです。