Knocking on the Heaven's Door


その男は「へっ」と嗤った
得意げに「へっ」と嗤ったのだった


なあ、君の矜持を支える
その侮蔑の嗤いは
哀しいほどはかないものではないのか


トイレットに駆け込んできた者の
ささやかな過ちを君は嗤うのか


2つのドアーの前に立たされて
どちらを開けて飛び込むか
君は常にただしく判断できるのだろうか


そりゃまあ
一方のドアーには錠があり
もう一方のドアーには錠がない
たしかにそうだが、だがしかし
それを即座に判断できるのか


ノックに返事がないのを確かめて
開けたドアーの目の前に
便器のかわりに
1本のモップがさかさまに
さびしそうに突っ立っていた


僕はきまりの悪い思いがしてドアーを閉め
となりのドアーを開けて入った


そんなささやかな僕の過ちを
君は「へっ」と嗤った