とかいに行きました


 きのう、とかいに行きました。
 まず、きしゃにのりました。きしゃはガタンガタン走りました。
 つぎに、のりかえて、でんしゃにのりました。でんしゃはドンドン走りました。


 でんしゃときしゃのちがいは、きしゃは、いすにすわってよこを見ると、まどがあります。はんたいのよこをむくと、人がとおるつうろがあります。でんしゃは、いすが長く2れつになっていて、よこを見ると、となりの人がすわっていて、うしろにはまどがあります。それで、まえにつうろがあります。
 それから、きしゃのまどの外は田んぼがあって遠くに山が見えますが、でんしゃのまどの外にはビルとか家とかがあって山はありません。それから、きしゃには、たいていピーナッツをかじりながらビールをのんでいるおじさんがのっていますが、でんしゃにはのっていません。あと、きしゃでは、むかいのせきにすわったおばさんがみかんをくれることがありますが、でんしゃではそういうおばさんはいないし、むかいのせきが遠くて手が届かないので、みかんをくれるおばさんがいたとしても、みかんをもらえないだろうと思います。
 ぼくは、とかいに行くとき、さいしょにきしゃにのって、それからでんしゃにのりかえました。


 そして、とかいにつきました。
 とかいには、うごくかいだんがありました。うごくかいだんの上を人が上にむかって歩き、人が歩いているかいだんもかってに上のほうにうごいていくので、かいだんを上がる人は、はやさが2ばいになります。
 下からこっちに上がってくるかいだんを、人が下におりようとすると、なかなかたいへんです。がんばると少しずつ下に行けます。がんばる力をゆるめると、人はまえにもうしろにも行かないで止まってしまいます。かいだんがうごいていて、足もうごかしているのに、人は止まります。足をうごかすのをやめると、人は自どうてきにうしろのほうへ、のぼって行くのです。
 かいだんを歩くのをやめて、ぼおっとしていると、ぼくは自どうてきにかいだんのてっぺんにつきました。てっぺんと言っても、そこは1かいなのでした。ぼくは「あーあ」と言いました。


 ぼくは、うごくかいだんからちょっとはなれたところに歩いていきました。そして、うごくかいだんを上のほうにのぼっていく人たちを、よこから見あげました。かいだんはななめなのに、人たちはみんなまっすぐに立っていました。ぼくの体を、かいだんのむきに合わせてかたむけると、こんどは、さっきとはんたいに、かいだんがまっすぐになって、人たちはななめになりました。
 ぼくがうごくかいだんをのぼるとき、ぼくはまっすぐだろうか。やっぱり、ななめだろうか。そう思って、うごくかいだんを、ためしにまたのぼってみましたが、ぼくがまっすぐでかいだんがななめなのか、ぼくがななめでかいだんがまっすぐなのか、それとも、ぼくもかいだんもまっすぐなのか、どっちもななめなのか、ますますわからなくなりました。


 ぼくは、すっかりつかれてしまったので、とかいの交ばんで、でんしゃにのるお金をかりて、うちにかえりました。とかいには、また行こうと思います。