噂話について


銀歯HP
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 都市伝説を収集したサイト。
 私も聞いたことのある話もあれば、はじめて知ったものもあったが、噂話として生成した話には独特の感じがある。
 残念ながら、99年9月で更新がストップしているもよう。恐怖の大魔王が降ってこなかったんで落胆したのでしょうか。


 噂話はおもしろいもんだ。「……らしい」「……ようです」「……だそうです」などがくり返される話法によるドキドキ感というのがある。そういう快感は、意外とネット上で味わうことはまれだ。
 たしかに、個人が運営しているサイトやブログにも「……らしい」っていう断定を避けた語り口は多いわけだけど、そういえば80年代にわんさか出ていた都市伝説的なものはないし、出てきそうな気がしない。
 リンクをたどったり検索エンジンを使えば、いずれはどこにでも行けてしまうという感じが、ロマンティックな「異界」としての「外部」を夢想することをさまたげるからだろうか。インターネットでは、伝聞情報があふれかえっていて、またそれらの情報が折れ曲がって伝わっているのは明らかなのに、噂の棲む場所がないっていう、なんか圧迫感のようなものがある。


 噂は誰か特定の個人が語るというわけではなく、集合的な語り手が作り出すものだと思われるが、ネット上の語りというのは、どこをみても「私」「私」「私」って、書き手の自己の刻印が押されたものばかりで(むろん、私がここで書きちらしている文章だって同じですよ)、誰が語っているんだかわからない噂話っていうのは、案外ないんではないだろうか。
 むろん、「ソース」の定かでない、真偽の怪しい「情報」ならば、山ほどある。つまり、「流言蜚語」や「デマ」と言うべきものにはこと欠かない。でも、噂話というのは、そういったネット上の「流言蜚語」のようなものと別の側面をもっているように思えるのである。
 うまくまとまりそうにないので、箇条書きしてみる。

  • 噂話はひそひそ語られる。
  • 「ひそひそ語られる」というのは、噂話は実態としては大っぴらに語られる場合でも、「他人に聞かれないように」という構え・態度で語られるということ。噂話は、狭い輪を作って(仲のよい友達どうしとか、井戸端とか)、秘密性をおびて語られる。
  • 一方、ネット上では、ブログに書くにせよ、掲示板に書き込むにせよ、不特定多数の人が見ているという前提で、言葉が発せられる。劇場型。
  • ネット上で語られる話は、2ちゃんねるにおけるような、匿名の書き込みが伝聞の形でなされる場合でも、書き込まれる言葉はなにか騒がしい。書き込む人の地声とスピーカーを通した音声が重なって同時に聞こえるって感じ。伝聞の語りの中にも、「おれ、おれ」っていう主張が感じられる。
  • 噂話においては、直接語っている人とべつに、背後に匿名的な語り手がいる感じ。「……らしい」という語り口は、視えない話者がどこか別の場所で同じ話をひそひそと語っている、という事態を聞き手に想像させる。
  • ネット上に流れる情報は、その情報を流している人の「意図」を勘ぐらずにはいられない。ここで「意図」って言っているのは、「陰謀」めいたものも想定しているんだけど、非常にミもフタもない「それってネタでしょ?」みたいな言い方にもやはり、語り手個人の「意図」を勘ぐらざるをえない(→「意図」の存在を確認して安心しようとする)コミュニケーションのありようが表れている印象がある。


 ああ、わけわかんねえ。


 ところで、先のサイトにも紹介されていたが、マクドナルドのハンバーガーにはネズミやミミズの肉が使われているっていう噂がむかしあった。
 その噂話について書かれた文章を、10年以上前にどこかで読んだ記憶がある。それは、たしかこんな話だった。


 マックのハンバーガーの材料にまつわる噂は、日本だけでなく、同じ時期にアメリカやヨーロッパでも語られていたらしい。で、アメリカの研究者がその噂話の出所を調査しようとしたそうだ。その調査結果はこんな不可解なものだったらしい。
 すなわち、噂の出所と考えられる場所は、アメリカの各州にまたがって多数あり、発生の時期がほぼ重なっている、と。この噂話はのちにマスコミで取り上げられたが、これが爆発的に広がったのはマスコミにのる前である。しかも、その広がるスピードは、一般に口コミで情報が伝達する速度をはるかにこえていたそうだ。したがって、特定の1つの地域で発生した噂が各地に伝播したのではなく、互いに接触のない別々の発生源で、同時多発的に同様の噂話が発生したとしか考えられない、と。くだんの研究者はこう結論づけたそうだ。


 この話をどこで読んだのか思い出せないのですよ。今になって気になって、本棚をあさり心当たりのある本をいくつかめくってみたのだけど、出典は見つからなかった。
 いま思うに、この調査の逸話自体が、きわめて噂話的なものに思える。読んだときは、「ほう、そんな不思議なこともあるのか」と興味深く、同時に「ゾーッ」とする感じがした。しかし、かなり怪しげな話だよ。ホントなんだろうか。