「あ、やる気ないのね」と書けよ

 新聞の政治記事というのは難解ですなあ。以下、東京新聞のサイトより抜粋。


■代表選出馬に強い意欲 小沢氏「責任回避しない」

 民主党小沢一郎前副代表は14日夜、9月の党代表選への出馬について「わたしでないと(与党に選挙で)勝てないというのなら責任回避しない」と強い意欲を表明した。静岡県熱海市内で記者団に語った。


 小沢氏は「心情としてはやりたくない。いまさら野党党首になっても、どうってことない」としながらも、「心情論は別として、本当に自民、公明両党を倒せる、選挙に勝てる態勢をつくるのが至上命題だ」と強調。


 どこが「強い意欲」やねん。


 と疑問に思うわけであります。


 「やりたくない」とか「いまさら野党党首になっても、どうってことない」とかおっしゃっているのだから、小沢さんはもう心底イヤになったんだと思うよ、僕は。
 気持ち分かるなあ。かったりーんだよね、何もかも。もう人生から降りたんだよね。僕もそうだから、よく分かりますよ。
 「わたしでないと勝てないというのなら責任回避しない」という、仮定の条件節2つ、否定語3つ含んだ言い回しからも、やる気のなさがあふれていて、共感しますです。「まあ、俺にやれって言うなら、やらんこともないわけではなくもないけど、正直荷が重いなあ、しゃあないのかな、あーあ」ぐらいの気持ちなのでしょう、小沢さんとしては。
 なぜ、こうした発言から、記者氏は「強い意欲を表明した」などという記事を書けるのか。


 それとも、記者氏が正しいのだろうか。いわば「やれ、言われたら、やらんでもないけどな。やる気ないけど」という言い方は、実は「強い意欲」を意味する政界特有の符丁であって、実際のところ小沢氏はやる気満々ということなのだろうか。「ぐひひ、俺さまの出番だぜ」と小沢氏はほくそ笑んでいるのだろうか。分かりにくい話だなあ。
 だとしたら、ジャーナリストたる記者氏は、なんの義理があってか、親切にも小沢氏の内心を推し量り、その本意を汲んでやって記事を書いて差し上げたということになる。結託してやがるなあ。


 私が記者だったら、「小沢氏、代表選出馬に消極的」という見出し打ってやりたいところだけどなあ。私なら、記事本文はこう書く。

 民主党小沢一郎前副代表は14日夜、9月の党代表選への出馬について「わたしでないと(与党に選挙で)勝てないというのなら責任回避しない」と煮え切らない態度に終始した。静岡県熱海市内で記者団に語った。


 小沢氏は「本当に自民、公明両党を倒せる、選挙に勝てる態勢をつくるのが至上命題だ」としながらも、「心情としてはやりたくない。いまさら野党党首になっても、どうってことない」と本音をのぞかせ、出馬への意欲を否定した。

 報道機関がいっせいに、そうやって字義どおりの解釈で記事を書いて既成事実を作ってしまえば、小沢さんみたいに偉そうにもったいつけてる人には一発で引導を渡せるような気がするけど。