「株価は見られないんですか」

 一日中病床に伏していると、ホリエモンはさぞつらいだろうなあと思う。狭いところに閉じこめられて身動きもできず、おまけに威張りくさった官憲に恫喝されたりするのはたまったものではないだろう。みずから積み上げてきたものがガタガタと崩れていくさまを檻の中でなすすべもなく見つめるのはつらかろう。堀江氏が不法行為をなしていたのかどうかについては知らないし、興味もないが、とりわけ彼のような仕事をしている人にとって株価を見られない、ネットも見られないという状況は、相当につらいのだろうからして、もうこれ以上、水に落ちた犬をたたくかのごとき報道をするのは、その必要もないし、みっともないだけだと思う。
 ワイドショーは、堀江氏のブログでの「捜査には全面的に協力する」との言葉を紹介し、にもかかわらず彼が調書への署名を拒否して「徹底抗戦」していることを責め立てていた。こういう報道機関は一度官憲に徹底的に弾圧されればいいと思う。納得できなかったら調書にサインしないのは、容疑者の正当な権利であるはず。
 昨日のサンスポ一面の記事には、あきれかえる。

 ライブドアは24日、証券取引法違反容疑で逮捕された堀江貴文容疑者(33)の社長辞任を発表した。本人の意向と言うが、同容疑者は一方で、東京地検特捜部の調べに対して容疑を全面否認。調書への署名を拒否し、徹底抗戦の構えだ。また東京拘置所ライフ(東京・小菅)の第一声が「株価は見られないんですか?」であることも判明。六本木ヒルズの豪華な生活から”麦飯”3畳半の独居房へ。メールもネットもできない”想定外の生活”が始まった。


 この記事につけられた見出しが、「『株価は見られないんですか』 ホリエモン あきれた独房第一声」というもの。報道人として恥ずかしくないんだろうか。
 「株価は見られないんですか」って、ただの質問でしょうが。質問することが、なにか「あきれ」られるに値する行為なのだろうか。官憲に対して質問すること自体が、「生意気」であって、容疑をかけられるような人間の行為として分不相応なものだとでもいうのだろうか。お上にたてつくと見られる行為をするだけで、バッシングされるのだね。
 この記事を書いた人間の奴隷根性こそ、あきれるべきものである。自分たちではろくに調べもせず、捜査当局が出す情報にもとづいて容疑者をぶったたく。強きをたすけ、弱きをくじく。たいした正義の味方である。