愚痴るよ

 今日はたいそう疲れた。
 「同調」するのってホント苦手だ。楽しむべき場所で楽しそうにふるまったり、興味のない演説をウンウンうなずきながら聞いたり、笑うのが求められるタイミングで笑ったり。やってらんねえぜ。皆してそうしていても、俺はできねえ。ますますできねえ。
 そんな中、不機嫌そうに仏頂面して無反応なオヤジひとり。いた。
 おお、見つけたぞ。同志よ。
 しみじみ歓ばしく思うも束の間。オヤジ、でもねえそれは日本人の国民性っていうやつでねそうそう変えられないんじゃあないかなあと思うわけでありますよ、うんぬん。演説をぶちやがる。
 ふん。俺は朝鮮人だ。文句あっか、あ? と言ってテーブルをひっくり返してやろうか、この野郎。ひっくり返してやりたいなあ。朝鮮人ではないけどもこの場で朝鮮人になって俺は朝鮮人だと言いたい。ぜひ言ってやりたい。
 何と言っても喫煙できぬのがつらい。2時間経ったぞ。まだ終わんねえのか。だいたい、なんでまわりのやつが全員日本人だって決めつけられるんだよ。どういう神経してんだ。
 くそもおもしろくねえ演説をにこやかにうなずきながら聞く紅一点。かわいいなあ。ぶらぶら動かした紐を追ってくるくる首を回す子猫のよう。群がるおっさんども。死ね。