トライ&エラー

 依然、ベースの指弾きがうまくいかない。
 楽器において初心者の段階で突き当たる壁は、ほとんどが運動神経の問題なんじゃないかと思う。力加減やリズムが均等になるように指を動かせなかったり、右手に注意を向けると左手がムチャクチャになったり。こういうのを修正しようと試行錯誤をくり返すのは、スポーツに似ている。反省意識をもって反復練習をしつこくやるしかない。
 ただ、ここ2、3日、試行錯誤しているうちに、ちょっとした発見もあった。右手の動きがぎこちなくなってしまう原因のひとつが、ようやく分かった。
 ベースの場合、右手の人差し指と中指を交互に内側へと巻き込むようにして弦をはじく。このとき薬指と小指は使わないわけだ。しかし、使わないからといってこの2本の指を伸ばしたままだと、スムーズに弾けないようだ。
 考えてみればあたりまえの話だが、人差し指はまだしも、中指だけを単独で動かすのは難しい。中指を動かそうとすると、同時に薬指・小指も動く。最初のうち、私は薬指をだらりと伸ばし、また小指をやや立てた状態で、薬指だけを動かそうとしていたため、うまくいかなかったようだ。薬指と小指を軽く丸めて、直接は使わないこれら2本の指を薬指と連動させて動かすようにしただけで、ぎこちなさはいくらか改善された。
 まだまだ満足に弾けないし、まともな音も出せないが、徐々にであれ前進しているのが分かるのは、愉しいものだ。
 楽器に限らず、たいがいのことは試行錯誤によって前進するものだし、またそうしてささやかであれ進歩したり新たな視界が開けたりするのに充足感を得ることができるものだ。しかし、それが望まない競争にさらされたり、自分にとって外的なノルマを与えられたりすると、途端に苦役へと様変わりするのだ。