次期厚生労働大臣に欽ちゃんを!

 芸人のなかでも笑芸を商売にする人のというのは、お得意さまである客をあからさまに見下したゴーマンな態度をみせるようでは、反発をくらってしまうわけで、それではやっていけないんだろうなあ、大変だなあ、と思っていたのだけど、テレビの芸人はそんなこともないのかしら。
 私がテレビを観るという習慣をすっかりなくしてしまった理由のひとつが、ほとんど「主人と奴隷」としか形容のしようがない芸人どうしの先輩/後輩関係を見せつけられるのに辟易したからなのだ。役者であれコメディアンであれ、「先輩」は威張りくさり、「後輩」はひたすら卑屈にヨイショするばかり。楽屋で上下関係があるぶんには知ったことではないが、そういうのわざわざ視聴者に見せないでくれよ、メシがまずくなるよ、と思うのだ。
 威張りくさる芸人としてとくに見たくない(どうせ見ないからいいんだけどね)のが、欽ちゃんこと萩本欽一である。いつだったか、彼は見栄晴に対し「おまえ芸能人のくせに一般人なんかと間違えられてやんの」というような言葉を吐いたことがあって、ギョッとしたのだった。こえーよ、欽ちゃん。
 で、そんな欽ちゃん、次期安倍内閣(不幸にして「次期」があればの話だが)の厚生労働大臣に適任ではありませんかねえ。


DODAの業界レポート(cache)


 転職を考える若者に欽ちゃんセンセーが答えるという Q&A 形式の記事なんだけど、これがなかなかすごい。
「転職を繰り返していますが、どうすれば天職が見つけられますか?」という質問に対する欽ちゃんの答え。

自分は何が好きなんだろう?何が向いてるんだろう?って仕事を探すわけですよね。そうじゃなくて「誰が自分を必要としているか」なんですよ。必要とされる会社や仕事を探さないから天職にならないのね。
いい会社に入りたいなんて、みんなが考えることじゃない。人数が多くて競争率も高いよね。そうじゃなくて、面接のときに「給料安いぞ。でも、おまえよく来たな」と言われるような会社に行かなきゃ。そう言われたら必要とされているのと同じ。必然的に必要とされるわけですよ(笑)。必要とされたら仕事が楽しくなるよ〜。


 安くこき使われる者はさいわいである。汝は「主」(というのはこの場合、雇用「主」のことだけどね)に祝福されるであろう。
 というわけで、欽ちゃんはいちいちありがたい説教を下さるのである。


「好きな仕事ですが、忙しくて給料が安い。これでいいんでしょうか?」の問いには、次のお答え。

この人は自分が不幸だと思ってるんですね。一生懸命働いているのに給料が少ないと。運を貯めるって意味では、すごく恵まれてるのにねぇ。不幸だと思いながら仕事している姿を上司や給料を決める人にバレちゃいけない。それじゃ給料は上がんない。
逆にね、もし残業ってことになったらテンションを上げなきゃ。鼻歌でも歌いながら「俺は残業が嬉しくってしょうがないんだ」って感じでね。自分を必要としている余計な時間を楽しんでますよと。そうやって余裕を見せつけてやんなきゃ。一度、上司にこう言った方がいいね。元気よく明るい表情で「仕事が足りないんですが」って。こうなったら最高の社員です。社長もね、「すごいやつだな」って給料を上げたくなりますよ。


 まさに、「汝さいわいなるかな」ロジックですよ。すんげえな、欽ちゃん。こえーよ、欽ちゃん。経団連の先生方が涙をながして帰依しそうな立派な説法でございます。
 よく考えてもみれば、テレビ芸人にとって、お得意さまとは、視聴者ではなく広告主すなわち資本家なのであるから、欽ちゃんもきっちり顧客に媚び売ってると言えるわけだね。芸人の鑑だね。またなんともご立派な聖職者ぶりである。