「自宅謹慎」って「軟禁」じゃないの?

 眠いし疲れてるし酔っぱらっているので、チャチャチャッと書こうと思う。
 なんというか、高砂親方にはがっかりだなあ。現役時代の朝潮はけっこう好きな大関だった。愛嬌もあったし、全盛期の北の湖をしばしば押し倒して尻餅つかせていたのも痛快だったし、なんといっても何度も何度もカドバンの窮地に陥りながらも千秋楽にぎりぎりで勝ち越すという不死鳥のような勝負強さを発揮したのには、相撲ファンの少年だった私はいつもしびれたものである。「今場所もアサシオ助かった〜」と。
 そういえば、「フジ三太郎」という昔の新聞連載の4コマ漫画に、朝潮と巨人軍の桑田真澄投手が登場したことがあった。不調に悩む桑田投手が朝潮関に電話して、こんな感じの相談をするのである。「大関、ボクいま7勝7敗なんですけど、次どうやったら勝てますか?」 「し、知らないよ」と困惑顔の大関


朝青龍騒動、出口が見えず 相撲診療所長「帰国療養を」(asahi.com)

 高砂親方はこの日、北の湖理事長(元横綱)に診断結果を報告した。しかし、「モンゴルに帰る元気があるなら、日本で通院、治療することもできるはず。(謹慎処分という)理事会の決議もある。高木医師の病院に通ってもいい」として、帰国には否定的な態度を崩さなかった。


 めちゃくちゃな理屈だなあ。朝青龍が心的な問題を抱えているなら、「モンゴルに帰る元気がある」ではなくて、「モンゴルに帰らずにいられないほど元気がない」ということであって、本人にとって帰国した方がいいに決まっているのに。そこは根性でのりきれってことなのか。
 しかし、親方よ。あなたがかつて、カドバンの千秋楽にいつも決まって抜群の勝負強さを発揮していたのは、根性ゆえのことだったのか。むしろ、あなたが大関の地位にとどまるのを助けてくれる人がいたおかげではなかったのか。そーゆー感謝の気持ちとやさしい心を忘れないでほしい、と僭越ながら昔からのファンは申し上げたいのであります。
 ところで、本題はそういうことではなくて、これと別にこの件に関して気になっていたことがあったのである。それは、「謹慎処分」って合法的なのか、ということである。
 恥ずかしながら浅学なもので労働法の知識はないし、そもそも「合法的」かどうかなんて私の倫理観とは何の関係もないのであって、The Damned というパンクバンドが「法がなければ犯罪もないぜ。うっとうしいサツもいなくなるな」みたいな歌をスマートに歌っているのを、きゃはーその通りだなあ、とか感激して聴いている精神年齢15歳のバカなもので、法がどう書かれていて、どう運用されているのかはよく知らない。
 しかし、今回の朝青龍の件で労働基準監督局が調査に乗り出したという話は聞かないから、雇用主が被雇用者を「謹慎処分」に処すのは、国家権力的には積極的に推奨しないまでも黙認していることなんだろうな、と思われる。
 いや、でも、相撲協会にそんな権限があるのか。一応、近代国家においては国家が暴力を独占するというのはタテマエではなかったのか。だってさ、「謹慎」ってようするに「軟禁」じゃん。「軟禁」と言うと軟らかそうに聞こえるけど、「閉じこめる」ってことでしょ。閉じこめられるのはとっても嫌だよー。
 国家権力が人を閉じこめるときは、いちおう形式だけは公平な裁判とやらを受けさせたり、いろいろめんどくさい手続き踏んでやるわけでしょ。グアンタナモのようなひどい「例外」(なのか?)もあるけれど。
 雇用主(相撲協会)は、たかが「理事会の決議」とやらで人をひとり拘禁できるってどういうことなの?
 そんなことを思っていたら、以下の記事を見つけた。


朝青謹慎は人権侵害?…モンゴル日本大使館前で抗議デモ(スポーツ報知)→ウェブ魚拓

 横綱朝青龍(26)=高砂=が2場所出場停止と謹慎などの処分を受けたことについて、母国・モンゴルの市民団体メンバー約40人が16日、ウランバートル日本大使館前で、日本相撲協会に対し「人権侵害をするな」などと抗議を行った。日本では、17日に朝青龍宅へ往診する予定だった精神科医が、診察を拒否していることも判明。“朝青龍騒動”は日蒙両国で混迷が続きそうだ。
 母国の英雄を救え! 集会を開いたのは「モンゴル民主同盟」と「急激な革新」のメンバー。日本大使館前に集結すると、「朝青龍は友好のシンボルだ」などと書いたプラカードを持ち、マイクで「朝青龍は軟禁されている」などと訴えた。
 これらの団体は日本大使館を通じ「処分の際はファンの気持ちも念頭に置いてほしい」と、日本相撲協会に処分の見直しを求める書簡も送った。また、15日と16日付のモンゴル各紙では「処分は重すぎる」との報道が目立つなど、同情論が急激に高まっている。
 日本協会では、朝青龍に対して常識の範囲内での外出は認めており、軟禁状態にあるというのは市民団体の大きな誤解。とはいえ大使館での抗議行動となれば現地での大相撲人気に影響が出ることはおろか、国際問題に発展する事態になりかねない。


 報知は「常識の範囲内での外出は認めており、軟禁状態にあるというのは市民団体の大きな誤解」と言っているけど、なんだよ「常識」って。モンゴルの実家に帰るのは、報知や相撲協会にとって「常識」でないのか。
 「モンゴル民主同盟」と「急激な革新」(カッコイイ名前だね)の言い分のほうがまったく正当だと思うけどな。雇用主が従業員に対して「自宅に閉じこもってろ」と命令するのをマトモなことだと考えてしまう感覚がマトモでない気がする。
 もっと急激に革新的に考えるなら、そもそも雇用主っていうのは労働者に向かって「カネやるから、そのかわりお前さんを一定時間拘束するからな」と言って毎日職場に閉じこめるんであるが、こういうのひでーなあオイ、という感覚を労働者が喪失することで、なんというか奴隷はプロレタリアになるんだわな、という気がする。
 ノエル・レディングザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのベーシスト)みたいな、おれリハーサルやレコーディングはかったるいからパスするわ、ライブ本番にはちゃんと出てって演奏すっからさ、という働き方が人間らしい労働じゃないのかなあ。
 はい、ビール3本目、空になりました。ごちそうさま。おやすみ。