「性的な誘い」で逮捕？

　なぜ逮捕されるのか、どうしても理解できないんだけど、記者やデスクは疑問をいだかなかったのかな。ちょっとした不条理な感覚を味わえる記事。

●トイレスキャンダルの米共和党上院議員、辞任を表明(asahi.com)

　空港の男子トイレで隣の個室に性的な誘いを行った容疑で逮捕され、辞任圧力が高まっていた米共和党のクレイグ上院議員（６２）が１日、地元アイダホ州で記者会見を行い、９月３０日付で議員を辞任すると発表した。
　同議員は「アイダホ州民、スタッフ、同僚の上院議員、そして妻と家族に対し、自分が起こしたことを謝罪する。大変申し訳ない」と述べた。
　クレイグ議員は６月、ミネソタ州のミネアポリス空港で、隣の個室でおとり捜査をしていた男性警察官に性的な誘いをしたとして現行犯逮捕された。同議員は有罪を認めて罰金を払ったが、問題の発覚後、「何も悪いことはしていない。有罪を認めたのは間違いだった」などとして辞任を拒んできた。

　「性的な誘い」自体が法に触れるのか。それともアイダホ州では同性を誘惑するのが違法なのか。その場所がトイレだったのが問題なのか。このおっさんの行為のどの部分が、またどういう法に抵触したのか、見当がつかない*1。あと、警官はトイレの個室にひとりこもって何の「おとり捜査」をしてたんだろうか。さっぱりわけがわからん。
　上の記事だけでは「事件」の状況について何とも言えないにしても、こういう説明抜きの記事を記者が平気で書いてしまう、しかもそれをデスクが通してしまうという無批判・無思考ぶりに、「え、なんで？」ととまどうのだ。
　この不条理な感覚は、私がいつも法とか国家とか組織とかにおぼえる不気味さと、通底しているような気がする。「法や規律に違反した者を捕まえる」というより、「捕まえた者を法や規律への違反者とみなす」というイデオロギーなしには、おそらく国家というものは存立しえないように思われるし、新聞などの「犯罪報道」はその意味でつねに国家に加担しているのだ。

*1:セクシャル・ハラスメントに近いと言えるにしても、場合によって不快とはいえ相手が容易に拒否できる条件下での「性的な誘い」を非合法とまでするのは不可解である。