きょう、ぼくはロマンスカーにのりました

 仕事でちょくちょく東京の新宿から箱根のほうににむかう電車を利用します。500円あまり、よけいに料金をはらうと、特急のロマンスカーというのに乗れるのですが、わたしはびんぼうなので、ふだんは特急料金のかからない「快速急行」というのをつかっているのです。sarutora さんにならって「脳内ロマ貯金」というのをしていたわけです。
 ところが、きのうあたりから、運動不足のうえにパソコンとにらめっこしすぎたせいでしょうか、せなかがいたい。せめて帰り道ぐらいはふかふかのリクライニング・シートにこしかけて、らくをしたいなあ。そうおもって、10年ぶりぐらいでロマンスカーというのに乗ったのです。
 そしたらまあびっくり。めちゃんこ快適ではないですか、これ。
 まず、シートの間隔がゆったりしていて、からだをのばせるし、車両のよこはばもひろいので、あの左右からぎゅうぎゅう圧迫されるかんじが、ぜんぜんしない。
 そしてなにより、ゆれない! いや、ぜんぜんゆれないっていうことではもちろんないのだけど、車軸にりっぱなバネがついているのでしょうか、ゆれかたがやわらかいのです。ガトゴトン、ガックン、てゆうかんじのゆれではなくって、ほわんほわん、てゆうゆれかたなのです。
 そういうわけで、小田急さんありがとう。とてもきもちのよい旅ができました。……















 ……というところでおわれば、こころやさしいお兄さんのおだやかな日々をつづった日記、ということになるのでしょうけど、もちろんわたしはおこっているのである。ここに資本主義のこんぽんむじゅんをみいだすのである(まいどこんな話ばっかですみません)。
 おい、小田急! てめえ、オラたちをバカにしてるだろ? なめてんな、このやろー。なんで、ロマンスカーだけあんなに快適なんだよ? ほかの車両はわざと豚小屋みたいにつくっとんのだろ、コラ。それが「付加価値」っていうやつなのか? 小田急だけじゃねえぞ、鉄道会社ぜんぶだ!
 と、いかりをぶちまけたくもなるものです。2駅3駅移動するための「各駅停車」はともかくとして、「快速急行」や「急行」の乗客のほとんどは、30分とか1時間とか、乗りっぱなしなのです。運よくすわれればまだしも、立ちっぱなしで1時間以上ということもあるわけです。
 車両のゆれをやわらげる技術があるのなら、なぜそれをロマンスカー以外の車両にも導入しないの? それはロマンスカーに「付加価値」とやらをつけて、特急料金をぼったくるためでしょう。
 それにあの「快速急行」「急行」の座席が長イスというのも、ふざけてるよね。車内アナウンスで「座席にはひとりでもおおくのお客さまがおかけになれるよう、つめておすわりください」などど車掌が言ってるけど、つめろってなにそれ? 長イスなんかにするから、つめなきゃならないんじゃん。ロマンスカーみたく、クロスシート*1にすれば、ずっと「おおくのお客さまがおかけになれる」よね。
 あの長イスってゆうのは、ラッシュアワーに、文字どおり「立錐の余地」をつくらずに客をなるべくぎょうさんつめこむための仕様なのだろう――それはそれでひどい――けど、こみあわない時間帯ぐらい、クロスシートでいいじゃん。そのほうが、たくさんのひとがすわれるよ。
 ところが、鉄道会社は、そうはしない。特急券を売りたいからです。快適な旅をなさりたいのでしたら、お客さまにはべっと追加料金をいただきます、というわけだ。
 こうして劣悪な普通車両をそのままにすることで特急の車両に「付加価値」がうまれます。おなじように、公立学校の教育環境を劣化させればさせるほど、私立学校と学習塾がたかい授業料をふっかけることができるようになり、ファースト・フードがやばい食材でプロレタリアむけのやすい料理を提供するいっぽうで、「健康」に気をつかうよゆうのある貴婦人がたは、よろこんで「自然食品」とやらにたかいお金をはらうのです。

*1:列車の進行方向をむいたシート