昨日買ったCD

 何年も、ことによったら十年以上も聞き続けて飽かない音源といものはあるものだ。そういう曲の真価を、初めて聴いたときに理解できることは少ない。「少ない」というか、私の場合「ない」。
 考えてもみれば、ひとつの曲の中にはおびただしい数の音が詰まっているわけである。いま「数」と言ったけれど、音の「数」をかぞえるためには、音を分節しなければならない。私たちは、不定形の音を《分節》し、その中から聴きたい音を《選択》し、さらに《再構成》して音楽を聴くのである。
 音源というのは、「素材」のようなものであって、そのままでは食えない。いや、食えないことはないけど、おいしくいただくことはできない。私たちは、ある音にはアンテナを鋭敏に働かせ、別の音は聴かなかったことにする、といったことを意識的・無意識的に行ないながら、「素材」としての音源を音楽へと転換させていく。いわば、身体をチューニングしていくわけだ。
 私は、何週間も何ヶ月も、ことによっては何年もかけて、このチューニングということをしながら音楽とつき合うのが好きだ。それまで気にもかけていなかった音が「聞こえる」ようになり、新たな曲の全体像を「発見」する瞬間は、何ものにもかえがたい。


アズ・イズ(紙ジャケット仕様)

アズ・イズ(紙ジャケット仕様)


マイティ・ガーヴィ!(紙ジャケット仕様)

マイティ・ガーヴィ!(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: マンフレッド・マン,エドウィン・オ・ガーヴィ&ヒズ・ショウバンド,エディ“フィンガーズ”ガーヴィ,エド・ガーヴィ&ザ・トリオ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2003/02/05
  • メディア: CD
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 60年代のブリティッシュ・ロックというかポップ。
 私は古いロックを好んで聴くのだが、彼らのことは最近まで知らなかった。彼らのCDを買うのは初めて。恥ずかしい。
 マイク・ダボというソングライター(ロッド・スチュアートなどにも楽曲提供している)が前から気になっていたのだが、そのダボ氏がこの Manfred Mann の2代目ボーカリストだというんで、YouTube で探してみた。で、下の曲を見つけてすっかり気に入ってしまったというわけです。破天荒なノリが楽しい。


YouTube - Manfred Mann - Ha Ha, Said the Clown


 この曲は、カバーのようだけどね(上の "MIGHTY GARVEY" というアルバムに収録)。そのアレンジには、このバンドの特色がすごく出ていると思う。
 他のオリジナルの曲を聴いても、いたるところに聴き手の目先を変える仕掛けがほどこしてあるようで、怒濤の展開に翻弄されたり、思わぬところで挿入されるセンチなメロディにホロリとされたりするのだ。まだ数回しか聴いていないんだけど、やはりマイク・ダボという人が書いている曲はどれもすばらしい。しかし、ダボだけでなく、メンバー全員の作曲能力が高い感じがする。もともとジャズの人たちらしく、直球でなく、変化球をかませてくる。絶妙なところで管楽器を入れてくるのが気持ちよく、リズムもおもしろい。ポップな曲づくり音づくりなんだけど、懐の深いミュージシャンたちだったんだろう。そう思わせる意外性が随所にちりばめられている感じ。
 噛めば噛むほど味が出そうで、これからくり返して聴いていくうちに、聞こえ方がどう変わっていくのか楽しみ。
 次の曲は、ダボが加入する前の時代の作品。ヒット曲で彼らの代表曲らしいのですが、私は寡聞にして知らなかった。


YouTube - Manfred Mann - Do Wah Diddy


 もう1枚買ってきたのは、押尾さん。お塩先生といったら押尾学さんですが、今回買ったのは超絶テク・ギタリスト、コータロー先生のほうです。


Panorama

Panorama


 やっぱすごい、この、ひとりアンサンブル。
 ギター1本で演っているとは思えない。手が6本くらいあって、2本のギターをそれぞれ腹の側と背中の側にくくりつけて弾いているんじゃないのか。と思うけど、ひとりでやっているのだ。多重録音でもなし、なんだよねえ。
 たった1本のギターだのに、耳がついて行けないよ。まともに聴こうとすると、けっこう疲れる。しかし、荒々しい(低音弦がビリビリ鳴ってるのとか)けれども、すんごいきれいにコードを鳴らす人だ。
 以前、押尾さんの "Hard Rain" という曲について、こちらで感想を書いたことがあったんですけど、その "Hard Rain" のライブ演奏が YouTube に上がっていました。最近、シャイロック、じゃなかった、ジャスラック*1が大活躍らしいから、すぐ消えると思うけど。


YouTube - Kotaro Oshio - Hard Rain(Montreux Jazz Fes 2002)

*1: (c)小田嶋隆さん