来年の抱負

 年が明けて時間ができたらベースを買おうと思う。
 友人のバンドのベーシストが脱退してしまい、「おまえ弾かんか」と、お声がかかったのであった。抜けたベーシストは十年選手であって、ろくすっぽ弾いたことのない私に「代わり」が務まるわけもないのだが、とりあえず定期的にスタジオに入って気楽にやってくれればよい、ギター弾くんだからベースも何とかなるだろ、とのことなので、これ幸いと話にのろうかしらと思っているわけである。
 ベースというのは、前々から関心があった楽器ではあった。何と言っても、弦の触れ幅が大きいというのに惹かれる。私は、ギターを鳴らしていても、強めにはじいた低音の開放弦がブーンとうなるのを何より気持ちよく感じるくらいなので、ベースはうまく弾ければさぞかし快感なのだろうなと思う。
 今までは、楽器の性質上、ひとりで弾いて楽しいとも思えず、買うのを躊躇していたのだが、スタジオで大音量で鳴らせるとなると、俄然欲しくなる。楽器を手に入れる前からはりきっているのもおかしなことだが、楽器というのは買う前の時間もまた楽しい。CDなど聴きながら、根拠のない全能感にひたれるからである。
 弦が4本しかないんだし、1本ずつ弾けばいいんだろ。簡単そうじゃん。ジャック・ブルースとかダフ・マッケイガンとかを聴きながら、すぐに自分でも弾けそうな気になっているのである。今の私の脳内じゃあ、レッチリのフリーだって目じゃないね。
 でも、実のところ、個々のベーシストの個性というのは、いまだよく理解できていないのだと自覚している。楽器を実際に触ることを通じて、大雑把にであれ、どう弾けばどんな音が出るのかという感覚を身体で理解することで、はじめて「聞こえてくる」(というのは「分節される」という意味で)音もあるのだから、そういうのも楽しみ。