ボヘミアン・ラプソディ

 昔、英国に Queen というロックバンドがあって、Bohemian Rhapsody という、本人たちすらライブで再現できないそれはそれは大変な難曲がある。われらのバンドでこいつをコピーしようぜということになった。さあ大変だ。
 ということがあって、YouTube に何か参考になる動画はないかしら、と探してみたら、あった。いや、ぜんぜん参考にならないけど、難曲だろうと果敢に挑戦すればいいじゃないか、楽しくないことはないんだし、と思えた。



YouTube - Bohemian Rhapsody Live Acoustic


 なんとアコギ1本で弾き語り。オペラなところもオッサン、ひとりでやってる。ギターソロは口笛。
 この人エライなあ。と感心するのは、どう見てもこの人ぜんぜんふざけてないよね、マジだよね、としか見えないところである。自分でアップロードした動画のコメントでも、「ちょっと風邪ひいちゃって高域の声出なかったよ」みたいな、本気な言い訳してるくらいで、演奏からもボヘ・ラプ大好きっていうのが、伝わってくる。
 しかし、好きだからこその悲しさというものもある。とくに、他者の声というのは再現できないもので、その人なりの固有性というものから逃れられないのであって、このおじさんだってフレディ・マーキュリーに惚れ込み、陶酔感に浸りながら、ああ、あのように歌おう、歌えるはずだ、とぜんぜん思わなかったはずはないのだが、しかし実際に声を出してみてはじめて、こりゃフレーディちゃうやんか、とみずから思いいたったのである。あこがれという感情のなかには、その対象への同一化願望が含まれるものだ。おれもフレディになれる。完全に、とまではいかないにせよ、まあ結構近いところまではいくだろう。歌う前に彼は信じていたのである。ところが、マイクの前で発声してはじめて、フレディのではない、取り替えのきかない「おのれの声」、というものに出会ってしまうのだ。
 その失望感というか、哀しみが、あなたに分かるか。私は分かる。よーく理解できる。だから、このオッサンを見て嗤うな、と言いたい。




参考リンク
 オリジナルの Queen によるライブ演奏はこちら
 まちがった。こっちでした。
 しかし、Bad News は、演奏うまいなあ。うまくないとできないハズしかただよね。Queen はイントロのコーラスを省いているし、途中のオペラなコーラスは、そこだけレコードかけてごまかしてる。