私家版世界十大ロックCD

after game over - 音楽でもやってみようか


 idiotape さんに倣って、私もやってみた。こういうのって完全に自己満足だけど、そのぶん書いてて純粋に楽しいもんだ。だらだら書いてるうちに、ずいぶん長い文章になってしまった。

1. Jeff Beck "Truth"
2. The Jimi Hendrix Experience "Electric Ladyland"
3. Ramones "Ramones"
4. Sex Pistols "Never Mind The Bollocks"
5. The Clash "Sandinisita!"
6. Guns N' Roses "Use Your Illusion I & II"
7. Aerosmith "Get a Grip"
8. Manic Street Preachers "The Holy Bible"
9. George Michael "Faith"
10.The Beatles "Abbey Road"


 「世界十大ロック」なんて言いながら、米国のが3つに英国のが6つという偏りよう。しかもどれも男性のみからなるバンドないしミュージシャンだし、そのほとんどが白人。そういうわけでわれながら政治的にぜんぜん正しくございません。
 1はジェフ・ベックもすばらしいけれど、これはロッド・スチュアートの出世作でもあって、彼の破天荒ながら深みのあるヴォーカルがすてき。マッチョでパワフルなのに同時に枯れてもいる。The WhoKeith Moon も1曲だけ参加している。
 2はエクスペリエンス名義の最後のアルバム。前2作よりサイケデリック感にあふれていて、混沌とした作品。私ごときが何か言えるシロモノではないのですけど、エレキギターってこんなに多様な音が出せるんだなあ、ということにまずは驚く。また、重ね録りされたギターのどのトラックに注意を傾けて聴くかによって、聞こえ方がぜんぜん違ってくる。その意味で万華鏡のようで、「全体像」なんてつかめない。
 3から5はパンク。3は「コロンブスの卵」的な作品。単調なエイト・ビートも常軌を逸するくらい変化をつけずに繰り返せば、妙なグルーヴが生じるのですね。人間が演奏しているのにマシーン以上に機械的。彼らがすごいのは、70年代に発表したこのファーストのスタイルを90年代に解散するまで変えなかったこと。普通、人間には「向上心」という煩悩があって、「新しい要素を取り入れよう」とか「もう少し難しいことをやってみよう」とか考えてしまうものだと思うのだが、この人たちはそういう色気を最後までいっさい出さなかった。
 4は言わずと知れた名盤中の名盤。むかしギターを始めたころ、初心者用の練習曲として聴いているうちにハマってしまった。彼らには「ためるところをあえてためない」みたいな逆転の発想があると思うのだが、妙にダラーッとしてのっぺりしたリズムが逆に気持ちいい、みたいな。
 5のクラッシュについては、「最高傑作」の呼び声の高い3枚目の "London Calling" ではなくて、4枚目の "Sandinista!" を推してみた。スタジオでセッションして遊んでるうちに曲ができました、という風なゆるーい感じが、音の輪郭がぐちゃぐちゃになるほどのダブ・ミックスの効果もあって増幅されており、これまた混沌とした作品に仕上がっている。街で雑踏のざわめきに耳を澄ますと、ふわりと和音やメロディが瞬間的に立ち上がっては消えていく、というよな感覚にも似た、刹那的な美しさがところどころにあって、つかみどころがないながら最高に魅惑的な一品であります。
 6もあえて "Appetite for Destruction" の方でなく、ぐちゃぐちゃしてまとまりに欠いた感もある "Use Your Illusion" に一票。「曲」という単位においても、また「アルバム」という形態としても、「適切な尺」というものがあろうかと思われるのだが、この作品群で彼らはそういう「尺」に収めようなんて意思はすっぱり放棄しているように思われる。そんなもの知ったことか、といういさぎよさ。あれもこれもと曲を詰め込んでいるうちに結果的に2枚同時発売ということになったのだろうし、ムダと思えるほど冗長な感じがしなくもない曲も多い。スラッシュさんは、いまふうの言い方をすれば、空気を読まずに暴走しまくっている。もっとコンパクトにまとめろ、とか不粋なことは誰も言わなかったんだろうな。とはいえ、たんに長いというのではなく、綿密に設計された感はあって、ただそのスケールが途方もない。という点で、次作への期待がいやおうなく膨らんでしまうアルバムだったのだけどなあ……。
 7について。Aerosmith なんて、どのアルバムもみなおんなじ、と思っているのだけど、私が一番はじめに聴いたのがこれだというだけの理由で "Get a Grip" を選んでみた。世界一猥褻で下品なバンドだと思う、というのはもちろんほめ言葉。アルバム・タイトルにもなっている3曲目の "Get a Grip" が、もっとも卑猥で、お祭りで生け贄の牡牛に村の衆みんなで襲いかかるときの最高のBGMになると思います。
 8は空前絶後の怪作。奇をてらっているのではないのは確かなのに、なにかが微妙にずれている。いびつとしか言いようがない気味の悪い作品でありながら、不思議と快、なのである。曲の作りがどれも全体として非対称というかアンバランスなのだ。ほとんどの曲が「起」「承」「転」までは見事に決まってるように見えるのに「結」がむりやりにならざるをえないのだ。落としどころのつけられない奇怪な構成の曲なものだから、最終的には強引にバサッと投げ出すようにピリオド打っちゃうわけである。すっきりなんかできないわけである。そんな曲がズラーッと並ぶものだから、どこにも到達できない感がただよってたまらんのである。最良の音楽というのは、終われない、つまり「曲」という単位には収まりえないものなのではないか、なんつうことをつらつら考えたりする。
 9は説明不能Wham! 解散後のアンドリュー(だっけ? 相方は)じゃない方のソロ作品。どの曲も軽装備で録音している感じで、カネかかってなさそうなんだけど、ほんとうに充実したアルバム。下に YouTube の動画をリンクしておきました。I Want Your Sex! ところで、これ「ロック」なのかな。まあいいや。
 10 はビートルズをあえて無視するというのも、いいかげん大人げないかなとなんとなく思ったので、一応あげといた。ビートル・マニアというのは、いけ好かないヤツが多い。とくにレノン崇拝者は人格のねじ曲がったろくでなしばかりだ。うかつにも「イエスタデイいいよね」とか「わたしヘイ・ジュード好きなの」とか言おうものなら、ヤツらはたいてい鼻で嗤いやがるのである。だから、ヤツらが〈通〉ぶって勧める『リヴォルヴァー』でも『マジカル・ミステリー・ツアー』でもなく、『アビー・ロード』を挙げてやった。しかも、推挙の理由は「B面のメドレーがステキだから」だ! そう言うと根性のひねくれまくったビートルマニアの連中はこう言うんだよ。「ああ、そりゃリンゴ・スターの下手くそなドラム・ソロが聴き所だよね」と。ちげぇーよ、バカ! 最後にポールが「君が奪い取った愛は、結局のところ君が作りだした愛にほかならないのさ」と歌うところね、あそこでワタシは涙するのだよ。文句あっか、コラ!


YouTube - George Michael-I Want Your Sex