I Wanna Riot/RANCID


 エピタフ・レーベル所属のアーティストが参加するコンピレーション・アルバム、PUNK-O-RAMA。シリーズ化されてすでに10作ぐらい出てんのかな。詳しくないので、はっきりしたことは言えないのですが。そのシリーズ第1弾より、ランシドのナンバー。


 中学のときの番長だった鈴木くん(「田中くん」か、あるいは「山田くん」だったかもしれない)は、物静かな人だった。子分格のヤンキーが、やたらと周りにからんだりいざこざを起こしたりしていたのに対して、鈴木くん(「佐々木くん」だったかなあ)は、威厳をたもってどっしりと構えていた。威圧感があった。
 とりたてて荒々しいそぶりは見せないのに、「鈴木、この前、○○中の△△をボコボコにしたらしいぞ」といった真偽不明の噂がながれたものだった。脅しつけるような口調や大声でなくても、彼に名前を呼ばれると緊張した。もっとも、彼は親しい取り巻き以外に対しては、たいがい名前を呼ばずに「オイ」とだけ呼んだのであるが。その「オイ」がまた、威圧感があった。
 そういうのって、資質だよなあ、と思う。


 私はオリジナル・パンクは好きだが、90年代にアメリカ西海岸あたりにボコボコ出没したパンク・バンド(なんて一括りにするのはムチャだと怒られそうですが)はいくぶんさめた目で見ていた。音を詰め込みすぎだよ、押しまくればいいってもんじゃないのに、などと思っていた。ランシドについても、彼ら自身のアルバムの作品はテンション上がりっぱなしで、もう少し力抜いて退くところを作れば、彼らの敬愛するザ・クラッシュみたいな感じが出るのに、などと生意気千万、失礼千万、お前何様だという感想を持っておった。
 で、そんなことを思うのも、このコンピ盤での I Wanna Riot が、いい具合に抑制がきいていて、非常にすばらしいからである。暴動まっただなか、祭のなかを音に表現しているのではなく、暴動起こしたいぜという内向。というのは、歌詞の内容を知らずに、タイトルだけからこじつけているのですが。
 歌ってる人(Tim Armstrong)の声は、ちょっとジョー・ストラマーみたいで好きだ。くぐもったしゃがれ声。ささやくように歌うと味が出る。シャウトしても、すっきり音抜けして響くのではなく、どこか屈折して響き、陰翳がある。
 この曲では、曲調・演奏ともにボーカルの資質をいかすものになっていると思う。曲調は押さえ気味のスカ。
 ギターは、クリア・トーンで高音弦のみを使った「ンチャンチャンチャンチャ」というカッティングが主体。
 ドラムスも押さえ気味。4小節ごとに「ズッタッタッタカ」というフィルインが入るくらい。そのほかでは余計なことをせずに落ち着いて「ズンタンズンタン」とエイト・ビートを刻んでいる。タムは間奏→Aメロのつなぎの部分などで少し使うくらいで、シンバルも多用しない。ほとんどスネア・ハイハット・バスドラで構成している。
 ギターをガーン鳴らしたり、大仰な間奏が入ったり、ドラマチックなサビがあったりということはない。ボーカルは要所要所でシャウトするが、くぐもったしゃがれ声という声質もあって、カタルシスをもたらすというより、つねに屈折・陰翳を含んでいる。
 爆発しそうで爆発しない。なんかこうエネルギーが内にたまっていく感じが、実にクールなのだな。