Guns N’ Roses / Locomotive


 彼らが活躍していた80年代後半から90年代初頭には、まわりのめざといロック・マニアはへヴィ・メタルを聴いてて「フン、ガンズなんてポップスじゃねえか」って鼻で嗤っていたように思う。ガンズがバンド内のいざこざでもたもたしている間に、シーンの趨勢はグランジに移ってしまい、「ガンズなんぞ、大仰なスタジアム・ロックじゃねえか」みたいな雰囲気があって、「ガンズって案外カッコよくね?」とは言い難い雰囲気があったように記憶する。
 ミュージシャンでも、ガンズ・アンド・ローゼズをリスペクトしてますなどと公言する人は案外多くないのではないか。かなりの影響力はあるはずなのに。
 管見ながら唯一ガンズにあこがれていることを隠しもしなかったのは、私の大好きな Manic Street Preachers であった。しかし、マニックスにしろ当時(デビュー時)は完全なキワモノ扱いを受けていたころで、あろうことかガンズを引き合いに出して Stone Roses をめたくそにこき下ろしたりもした*1ものだから、「やっぱ、こいつらイナカモンのバカ・パンクだ。ガンズだってよw、プププ」と失笑を買っていたことは想像に難くない。実際にそんな声を耳にしたわけではなかったが、私の内なる他者の声がそう言ってた。「よりによってガンズが好きだなんて、思っても言うもんじゃないよ」と。
 たしかに、好きと言ったらアホかと思われそうだもんな。アクセル・ローズなんてこれ以上考えられないくらいダサイし。このダサさがロックなのだよ。この人、低音で歌えばシブイのに、なんでキンキン声をこんな多用するかねえ。とは思うものの、このダサイ高音シャウトで歌わないと、もうガンズはガンズでなくなってしまうだろう。(なに言ってんだ俺)
 しかし、その「ダサイ」ということば自体とっくに死語かもしれんわけで、アクセルさんはその死語たる「ダサイ」の理念型というかイデアを体現していますよ。もうこれは化石の化石、つうかアナクロなことを今どき「化石」と表する言葉のセンスこそが、疑われてしまいますね。そんな時代を生きているのですよ、私たちは。だから、ロックの権化たるガンズは無視されてしまう。生きにくい時代だ。


 そういう私も、ガンズには、ときどき聴きながらも、知らんぷりを決め込んできたのである。だって、ブレット・アンダーソン(Suede)も、ガンズをあのブライアン・ア○ムスなんぞと並べて「ファルス中心主義だ」なんてこき下ろしていたし、フレディ・マーキュリーの追悼コンサートでは Slash が大ブーイング浴びていたし、うっかり誉めるとポリティカル・コレクト的にやばいんじゃないか、とも思った。
 でも、正直に言って、ガンズってちょっと気になるんだよね。アクセルさんはやっぱり無視させてもらうけど、とくにダフ氏はすばらしいベーシストだと思う。ミスター・スラッシュもムダに冗長ななかに、ときどきハッとするような音色(とくに、ワウをつかった揺らし方なんか絶品)やフレーズがとびだす。


 で、前置きが長くなったが、Locomotive という曲。
 クレジットを見ると、この曲には、Izzy は参加していなくて、Slash がひとりでギターを弾いているようだ。
 イントロでのチョッパー気味のベースと、そこに粘りっけのある音のリズムギターがネチネチからんでいくところが、かっこいい。ベースのキレとギターのモサモサ感が、互いをひきたたせ合っている感じ。
 歌い出し後のドラムスのハイハットがクール。重くてテンションの高い演奏において、そこだけ妙に軽くてさめた感じがする。ギターが間断なく音をつめこんでいて、またギターとボーカルが微妙にずらしたからみ合いをしていて、けっこう騒々しいとは思う。騒々しいと思う人は、歯切れのよいハイハットに定位して聴くとよいですよ。そうすると適度にギターとボーカルが後景に退いて、いい具合に見通しがよくなるように思う。ギターかボーカルに気をとられすぎて聴くと、力の抜きどころがわからなくなって疲れるだけ。って、余計なお世話でしたね、すいません。
 あと、曲調が一番はげしくなるところでは、ボーカルに応答する形で、ギター・ベース・ドラムがユニゾンするところがあるんだけど、ギターだけがダラダラと後ろに流れる感じが気持ち悪くてすごく気持ちいい。これもまた、ベース・ドラムのキレのよさと対照的で、こういうところも計算ずくなんだろうなと思うと、もう信じられない世界ですよ。
 そうやってテンション上げまくっておいて、最後にしっとりと落とす。高音の甘いトーンのギターを主体にし、曲調を変えてクールダウンするのは、クラプトンのレイラ・メソッドかと思いきや、ピアノとドラムのテンションがまたドンドン上がっていって、続きが聴きたいと思ったところで、フェイドアウト。もったいね。やめんなよ。

*1:本当は Stone Roses からも多大な影響を受けたって、あとになってメンバーが告白していたけど。