Faces/Bad 'N' Ruin
Faces というのは、さっき、はてなキーワードに登録しておきましたけど、あのハスキーボイスのロッド・スチュワートがかつて所属し歌っていたバンドです。このバンドは、ソロシンガーとしてのし上がろうとするロッドが自分のバックバンド扱いしたため、分解してしまうんですね。もったいないことです。
ギタリストは、ロン・ウッドです。ドラムスはケニー・ジョーンズ(のちに The Who に加入*1)です。
で、Bad 'N' Ruin(asin:B000AU1J8C)。
タイトルどおり、歌詞も曲も、いにしえのロックンロールという感じで、私は大好きです。ロッド・スチュワートが、パワフルなしゃがれ声で歌います。都会で悪さにそまり、すっかり落ちぶれた(Bad 'N' Ruin)息子が、ホームシックにかかって母親あてに歌うわけです。
俺ぁ都会ですさんじまったぜえ。母ちゃん、これから帰ろうと思うんだけど、俺が誰だか、きっともう見分けがつかねえんだぜ。
I'll be in the mornin'
明日の朝早くそっちに着いて
And I fall down off my plane
飛行機を降りるんだ
Don't be embarrassed, Mother
当惑しないでくれよ、お袋
By your ugly worn-out son
薄汚く擦り切れちまったあんたの息子を見てさ
Your ugly worn-out son
薄汚く擦り切れちまったんだな
So just let me warn you
言っておくけど
Mother, you won't recognaize me now
母ちゃん、もう俺の顔が分かんねえぜ
演歌じゃねえか。つうか、日本近代文学じぇねえか。という内容の歌ですが、これがまた超ゴキゲンなナンバーなのです。
コード的には、Fのワン・コードですね。途中でGへの転調があるのですが、基本的にワンコードで、ぶんぶん揺するのですね。ベースとギターは、1拍目にこの曲での最低音のFを鳴らしますのです、ブーンって。強烈なブーンから始まるのです。
要所要所でパーンとシンバルが鳴ります。これも1拍目ですね。タカタカタカタカパーン。パーンは頭の1拍目です。
1拍目のブーンやパーンが上半身を揺らす一方で、もちろんロックンロールでありますからバックビートなんですね。バックビートは小刻みに下半身を揺すりますね。
これ何かに似てるなあと思ったんですが、泳いでるときのリズムですよ。クロールなんかで息継ぎするでしょ、パアって。これ1拍目。クロールのたえまないキックがまさにビートです。まあ、こじつけですけどね。
私は泳ぎがへたで、とくにつかれてくるとバタバタしますよ。つまり、この曲もやっぱりロニー・ウッドのギターがすばらしいんです。もたるもたる。シャキッとしないんです。シャカシャカ鳴るカッティングも気持ちいい。使っているのはストラトキャスターであるわけですが、ひとつひとつの音がとんがって自己主張するのですね。完全に和音に解消されずに音どうしがぶつかって、心地よいテンションを生んでいる*2。こんなふうにストラトを鳴らしたいものだと思います。うまくいかないんだけど。
ドラムもいい具合にバタバタしております。泳いでるときに思うんですけど、人間の体が水に浮かぶのって不思議な感じがします。なぜか沈まないんですね。
申し遅れましたが、ロッド・スチュワートもすばらしいです。キレがよくて奔放で。で、このキレをいかしているのが、対照的にもたもたしたロニーのギターだと思います。いいコンビだと思うんだけどなあ。ストーンズのギタリストにしておくのは、惜しいですよ。だって、ストーンズのギタリストはキース・リチャーズひとりで充分なんだし。