Sex Pistols/God Save The Queen


 英国国歌と同じタイトルをもつ Sex Pistols の God Save the Queen である。
 今日は、音についてではなく、歌詞について。(歌詞はこちらで全部読めます。)


 ジョニー・ロットンの歌詞というのは、シニカルなようでいて、シニカルに徹しきれない生々しさがあるように思う。たとえば、この歌の冒頭部分。

God save the Queen
the fascist regime,
they made you a moron
a potential H-bomb.


 1行目の"God save the Queen"(女王陛下に神のご加護を)は、ジョニーが女王を本気でうやまうわけもなく、明らかに反語的なのだけど、反語的なスタンスは貫徹されるどころか、2行目で早くもひっくり返されてしまう。「ファシスト体制がお前たちをまぬけにしてしまったんだぜ」と。彼は洗練されたアイロニカルな態度を保つことなんてできない人で、いきなり自身のマジな態度をさらしてしまう。ざ・ふぁすぃス・るぇいずぃーむ、だよ。


 また、ジョニーは「イングランドが夢みるとき、そこに未来なんかないんだぜ」(There is no future/in England's dreaming)と歌い、「君たちに未来なんかない」(No future for you)と連呼するわけではある。しかし、この場合の "you" とは何であろうか。
 そういう引っかかりをおぼえるのも、この歌には次のような一節が挿入されているからである。

we're the flowers in the dustbin
we're the poison in your human machine
we're the future
you're future


 1行目は「俺たちはゴミ箱の中の花」、2行目は"human machine"というのがよくわからないんだけど(機械人間?)、自分たちが「花」であり「毒」であるというこの2行が、ここを除く曲全体のニヒルなトーンからきわだつかっこうで、なにか強烈な矜持と意志をともなっており熱いのである。「君や俺に未来なんかないんだぜ」とくり返し歌いながらも、ここでは「俺たちが未来そのものであり、君たちが未来なんだぜ」と歌っている。
 "No future for you" の "you" と "You're future" の "you" のあいだには、目的格から主格への反転があり、その反転から読みとれるメッセージは、疎外された自己を回復せよということなのだ! なのだ?


 「君にとっての未来」。そげなふうに、君の外部に「未来」を求めるならば、No futureなんだぜ。なあ、気づけよ、おい。君こそがその未来ってやつなのさ。


 熱いね、ジョニー。君がうらやましいよ。